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『3時10分、決断のとき』雑感

原題名『3:10toYUMA』でリメイク作品だけど元の1957年版は未見。
なれどこれは良質な西部劇だった。

ポイントはいくつかあるけれど、エキブロ友だちのGun0826さんのエントリ
えろぶろ at Excite : 3時10分、決断の時の中で書かれている。
男泣き必至

男同士の友情、父としての誇りの復権、親子の絆そして少年の大人の男への成長。

に凝縮されております。ハイ、オワリじゃあ、なんなので、ちょこっと補足と言うか足してみると、ダークな雰囲気を纏った『大草原の小さな家』。もっとも大草原というより『砂漠の中の小さな家』って趣き。そこで妻と2人の子どもと共に牧場を営むダン・エヴァンズ(クリスチャン・ベール)。彼はインガルス家のお父さんのように頼りがいのある立派な父親でなく南北戦争で負傷し除隊したものの不自由な身体で牧場仕事もままならず、その上近くに鉄道が通るということで地主の妨害を受け、借りた金のかたにその牧場までもとりあげられようとしている。そんな父を軽蔑している息子。

だからこそ駅馬車強盗団のボス、ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)を護送する役目を買って出た。最初は報酬を借金の返済ということがあっただろう。だけどその護送中の出来事やそれをこなすうちに負け続けの人生。何かを成し遂げたいという想いに変わっていく。
その変化を丁寧に追いかけていく。

一方の強盗団の首領ベンは冷酷に人を殺す面と箴言をそらんじ、絵心もある知性を感じさせ女性を大事にする複雑な人物。ある意味ジョーカーに近い。『俺はお前だ、お前は俺だ』と言われているようで、だから度々ダンはしゃべりかけるなという。だけどもベンもまたその複雑な生い立ちからそうなった一人の人間として描かれており、ジョーカーのような『無邪気な悪魔』ではない。もちろんそういう映画も好物だけど、それぞれが事情を抱えた人たちが困難を乗り越え一つの何かを得るという古典的なだけど王道なストーリーだと思う。
それは古きよきオールドスタイルをちゃんとリスペクトしているマンゴールド監督の手腕だろう。

マカロニとはまた違った部分であり古きよき西部劇を現代的ながらも手堅くまとめた良作。
『許されざる者』のように西部劇とマカロニの集大成的ではないけれど、燻し銀のようなくすんだ鈍い輝きを放つ1本。是非お時間のある方は観て欲しい。

もっともやっているところが少ない上に全国ロードショーでなく順次ロードショーなのが残念。自分が観た時も結構人が入ってたし他でもそういうエントリを読むけど、結局公開館が少ないからということなんだろうし、難しいんだろうけどやっぱりイイものを観ないと感覚が鈍ると思う。そりゃあ旬の俳優とか人気俳優の出ている作品も良いけれど、丁寧なしっかりとした作品を観ないと感覚って鈍ると思う。

「3時10分、決断のとき」の映画詳細、映画館情報はこちら >>



こっからは西部劇といえば…

まあやっぱり銃談義。西部を渡るには銃の腕でしょ?みたいな感じだけどこの映画もしっかり銃の役割が描かれていて嬉しくなってくる。
まあこれは本当にマニアックなネタなので興味の無い方はさらっと流してください(笑)

やはり西部劇と銃というのは切っても切れない関係で、ベンの銃はコルト・シングルアクションアーミー。ピースメーカーという名前が皮肉でもあるけれどグリップに十字架の飾りがある。これも最後まで観ると感慨深い。こういう使い方にも痺れる。

ダンのもっているライフル(後半はソウドオフの水平2連ショットガンをつかっているけど)はスペンサー銃。これは幕末の頃に日本にも入ってきた銃で.50口径という大口径ライフル。当時としては旧式で信頼性も低いのにそれを持っている辺りベンは困窮しているんだなというのも分かるし、これは南北戦争時からつかっているのかも?と思わせる。
ウィリアムが家から持ち出した拳銃もコルトの旧式リボルバー。それを金属カートリッジ用に仕立て直したもの。当時最新式のピストルは最初から金属カートリッジを使うように出来ていたけれど、旧式の先込め式リボルバーを元込めの金属カートリッジを使うように直したというのもらしい。ベンや他の強盗団の副首領格であるチャーリー・プリンスの使っているリボルバー、スミス&ウェッソンの№3リボルバーは高価だった。なので町のガンスミス(鉄砲屋、修理などを主にする)が改造することもよくあったとか。

そのチャーリーが使っているスミス&ウェッソンの№3リボルバーもロシア向けなども作られたモデルで彼のはスコフィールドモデル。コルトピースメーカーとの軍用制式拳銃トライアルに参加したが残念ながら採用されなかった。だけどその中折れのアクションはSAAとは違い一気にカートリッジを排出出来て素早く装弾できるという利点がある。その分機構が脆弱となってしまって採用にいたらなかったというがそのスタイルは非常に目立つしキャラクターが立っている。まさにチャーリーのキャラにぴったりな1丁いや2丁か。

あとウィンチェスターや、駅馬車に載せられたガトリングガンなんかもお約束だけど、特に強盗団のメキシコ人の射撃名人が使っていたコルトのリボルバーライフルなんかも珍しいので印象に残った。
画像があったんでとりあえずこそっと貼っておきます。
『3時10分、決断のとき』雑感_a0029748_23564066.jpg

ちょっと分かりにくいのでその銃自体の画像も
『3時10分、決断のとき』雑感_a0029748_23574334.jpg

こういう細いチューブのスコープって西部劇の時代を感じさせるアイテムの一つですねえ。続夕陽のガンマンだったかなんだっけ?ちょっとうろ覚えだけどリー・ヴァン・クリーフがこういうチューブ式のスコープをのっけたウィンチェスターを使って狙撃してたっけ。いやうろ覚えなんで別の映画かも?

キャスト的にはピーター・フォンダがピンカートン探偵社の雇われガンマンを演じていたけれどお父さんヘンリーが西部劇スターだったという部分と『イージーライダー』などを演じたピーターがこういう役を演じているという部分が古いファン的には色々思い深い。このキャスティングは多分狙っていると思う。

儲け役はチャーリー・プリンス役ベン・フォスター。彼のベンへの偏執的な服従いや愛情?のような部分は物語のスパイスとなっていた。
他にもメガネの医師(獣医なのにピーター・フォンダ演じる老ガンマンの銃弾摘出手術をすることになる)の名前が『ポッター』というのが妙にツボだった(笑)これは偶然だろうけど。

原作はエルモア・レナード。数多くの小説(パルプフィクション)を手がけ映画のホンを書いたこともある彼の短編だそうだ。犯罪小説ではワイズクラックを叩く軽妙洒脱な悪党がでてくるけどベンの造詣はなるほどそうかも。

銃の面でもガッツリ楽しめたというところは『グッド・バッド・ウィアード』に共通するがさすがにこちらの銃の選択は渋かった(笑)



幕末 - Wikipedia:7 幕末の兵器7.1 小銃
Spencer repeating rifle - Wikipedia, the free encyclopedia
コルトM1851 - Wikipedia
Colt 1851 Navy Revolver - Wikipedia, the free encyclopedia
Smith & Wesson No. 3 Revolver - Wikipedia, the free encyclopedia
スミス&ウェッソン - Wikipedia
Colt revolving rifle - Wikipedia, the free encyclopedia

by tonbori-dr | 2009-09-09 23:59 | Movie