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*もったいないって…。『真夏のオリオン』

このタイトルの台詞は主人公である伊-55潜水艦艦長倉本が度々口にする台詞である。

基本、こーゆう日本のここ最近の第2次世界大戦モノとしては、既に期待するところはあまりない部分もあるけど、それでもまあとりあえずと思い観てきた。

登場人物の髪型云々についてはもはや言うまい。というかそれほど無理はないし、まあ海軍は長髪OK(うるさくゆえば長すぎだけど)的なところもある。

問題はやはりシナリオと演出。
あらすじはこうだ。現代、あるアメリカ人からの手紙と、それに添えられた1枚の楽譜をもって、祖父が艦長をしていた潜水艦の乗組員に何故楽譜がアメリカに渡ったのか?その謎が語られるところから話は始まる。

潜水艦伊-77潜は倉本艦長に指揮され、日本軍が沖縄へ侵攻する米軍の補給線を断つために防御線の最終ラインを守護していた。
そして鮮やかな指揮で哨戒中の米潜水艦を撃沈する。
その頃、先の守備ラインについていた倉本の同期有沢に指揮された伊-81潜は補給船団を発見するが、同時に敵の駆逐艦に発見される。有沢は先手を打とうとするがことごとく読まれ追い詰められてしまう。
最終ラインで警戒中の倉本は敵補給船を発見、撃沈するが、敵の駆逐艦に発見される。駆逐艦パーシバル艦長スチュワートはベテランのサブマリンキラー。ここに太平洋上で潜水艦vs駆逐艦の死闘が始まった!

なんて書くと、それどこの『眼下の敵』?ってなりそうでしょ。(ちょっとUボート風味の)けど実際はかなりスィートかつユルいんですよ(笑)

それには理由があって度々、陸(おか)のエピソードが挟まるんだけど、それがねー、もうリズム以前に恥ずかしい。まあそれは艦長の人柄と楽譜の伏線のためとは思うんだけど、それならもう少しまとめた方が、いやぶっちゃけ半分くらいにまとめとけよと。それだけでも随分印象違うと思った。

元もとのネタがあるそうだがそれとの違いは今回確認していない。池上司の「雷撃深度一九・五」という作品だそうだけどパンフによるとアイデアと状況だけを貰い、脚色に『亡国のイージス』の福井晴敏を起用した。なるほど楽譜とかそーゆうのは福井巨匠のアイデアかと思ったが物語のマクガフィンとなるには少し中途半端な印象を受ける。(その福井監修によるノベライズは別に出ている)

もちろん楽譜は悪くないとは思うし、仮にコレが小説ならハア、そういうのもあるかもねとは思うけど、実際には回天乗組員とか敵の艦長の描写とかが凄くおなざりで、いやソコを描かないとダメじゃんかという話です。

しかも名作『眼下の敵』をお手本にしているのにその足元にも及んでいないのはそういうことだと気がつかないと。というか気づいてなさそう(^^;
『ローレライ』は日本側の都合だけを描き、米軍の方は控えめしていたけど今回は話の都合を考えれば伊-77と81、そして駆逐艦パーシバルの都合じゃないですか。いや既に81潜はアバンで処理してもよかったかなとか、それこそ『もったいない』って。

人道もいいんだけど控えめにいっても殺し合いをしている訳だし、アバンできっちり敵潜水艦を伊-77潜は倒しているんだよね、そこらへんを考えると米軍なんかも台詞で処理されているけどスチュワートの心情とか、当時のアメリカ海軍的に考えるとあのラストもスィート過ぎる。

結果『もったいない』映画がまた一つ(--;

いや平和も人命尊重も真っ当なんですけど、戦争を描くならもう少し命のやり取りのシビアさとかそういうものを描かないと、そりゃアニメーションの方が(出不出来は作品にもよるけど)まだしっかり描いてると思う。

とにかく『眼下の敵』のような作品を作りたいという志だけだったなあという感じ。
関係者は百本ノックよろしく『眼下の敵』を百回観るべきというのだけはよく分かった(苦笑)

と、まあまいどのグチになっちゃったけど、脚色こそは福井巨匠だけど脚本は『ミッドナイトイーグル』を書いたお二人だった。うーむ。アレもそうとう(苦笑)感想を書く気が失せるくらいトホホな作品だったけど、アレよりはちょっとだけマシだった。それは巨匠のおかげか今回は篠原監督のおかげなのかは分からんが、あくまで『ミッドナイト・イーグル』よりマシなだけということで〆たい。

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by tonbori-dr | 2009-07-30 23:50 | Movie