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*天網恢恢『天使の眼、野獣の街』

我らがトーさんことジョニー・トー監督の元で脚本家としてトー組に長年携わってきたヤウ・ナイホイの初監督作品。

エキブロ仲間のGun0826さんもオススメな『天使の眼、野獣の街』
えろぶろ at Excite : 天使の眼、野獣の街

前売り買ってて公開されていたのだけれどちょっと所用で観に行くのが遅くなってしまった(^^;あやうく券が無駄になるところだったが時間を作って観てきたが、トー組が絡むと新人監督でもここまでやるのか!”いやそれともこの新人監督が凄いのか?

初監督でこの手馴れた職業監督っぷりは何なんだ?はっきり言って今の日本のこのジャンル部分では香港電影はもうぶっち切りというのを思い知らされた。

オープニングから主要な登場人物が途切れなく登場する。このシークエンスからしてしびれるのだが、伏線の張り方、登場人物の配置の仕方などは手馴れすぎている。
そこからの話の持って行き方が上手い。やや固いなと思った部分もあるけれど伏線回収の仕方も上手い。そして視点の切り替えなどのカット割。新人とは思えない手馴れた構図。

感じとしては『暗戦/デッドエンド』に近いなと思った。もちろんナイホイは脚本を担当している。

物語は新人さん頑張るというフォーマットなのだけれど『エレクション/黒社会』の2人。ロクとディーが犬頭とホローマン(影の男)としてまた対決するという美味しい構図があったがこれがまた『エレクション』とは違うのだねー(^-^)さすがのサイモン・ヤムとレオン・カーフェイ。とくにヤムヤムは出っ腹にアブラギッシュな冴えない外見に鋭い観察眼を持つベテラン犬頭を演じ主人公仔豚(カバーネーム)ちゃんを鍛えていく。若手を指導するベテランなんて、それなんていう『野良犬』って感じなんですがこれがまたイイのだ。そこには日本のプログラムピクチャーが忘れてしまった空気がある。
何も『踊る大捜査線』『相棒』ばかりが警察、刑事モノじゃない。時流に即しながらもちゃんと出来ることをきちんとやってるのを観ると本当に嬉しくなってしまう。
そして日本映画界、しっかりしてくれよーと思ってしまう。






香港警察は皇家香港警察時代からの伝統を受け継いで、英語呼称が使われているので上官はサー、女性ならマダム。組織も複雑だけどその中でも刑事情報課っていうのはエリートの集まる場所として描写され、『インファナル・アフェア(無間道)』でもアンディ・ラウが配属されたのもココ。で、主人公たちの所属する部署はその中でも特に秘匿された隠密部署でまるでスパイ組織のようでもある。任務は対象に張り付き尾行、監視する事。天上の眼のように。これが英語での原題『EYE IN THE SKY』に繋がる。正直英語タイトルの方がしっくりくるんだけどもまあ仕方が無いか。
そこでは本名で呼び合うことは禁止。(とっさの時に名前が知られることを防ぐため。)なので各自の特徴でカバーネームが決められる。主人公は現場主任である犬頭(ヤムヤム)によって仔豚ちゃんと名付けられる。その主人公ケイト・ツィ。クセのある美人でなんでも日本に留学の経験もあるとか。そしてトー組常連ががっつり出演(笑)ラム酒はもちろんのこと、『PTU』『大事件』のマギー・シュー(ちょっと『大事件』の時の役柄とだぶる監視チームの指揮官役)とか同じく『大事件』以外にも出演多数なエディー・チョンとか。
とくにラム・シュはやること成す事いつものラム・シュでデブがデフォルトになってる(笑)

そして仏教的というかコレGun0826さんも指摘しているけど神さんは見てるでというタイトルに込められた部分はやはりお国柄というか。『インファナル・アフェア』でも底に流れているモノを感じる。(それを煮〆たのがナイホイ脚本の『マッスル・モンク』だと思うんだけど>どうでしょうGun0826さん)だからこそホローマンの辿る結末を思えばこのエントリのタイトルの言葉『天網恢恢疎にして漏らさず。』を思い浮かべた。
天網恢恢疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず):ことわざデータバンク

しかし幾つかの映画を観て改めて思ったんだけど敵役、ライバル、相手役、良い映画はこういった主人公と対になる役柄がやはり良いことが多い(『ダークナイト』しかり『ノーカントリー』しかり)。
今回ホローマンを演じたレオン・カーフェイも冷静さを装いながらも内に秘めた凶暴性、神経質な部分を上手に演じて画面に緊張感を持たせたし、ヤムヤムは相変わらず安定している。悪党から善人までまさに変化自在。
そしてそんな2人に囲まれながらも堂々たる演技を披露したケイト・ツィ。演技陣も良く今の香港電影界、色々大変とは聞くがやはりガッツリやってくれるなと感じた1本だった。

しかしGun0826さんのエントリに書いてあった、日本のリメイク話マジだろうか。生半可なリメイクだと恥かくだけと思うのだけれど。

「天使の眼、野獣の街」の映画詳細、映画館情報はこちら >>

追記:
ちょっとだけ文章修正しました。

さらに追記:
愛すべき映画たち 『天使の眼、野獣の街』(2007/ヤウ・ナイホイ)
いいレビューです。トーさんファンは必読。

by tonbori-dr | 2009-04-03 23:03 | Movie