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*もし『無間道』が無かったとしたら ~『ディパーテッド』~

 それでも多分避難轟々?いやそこまではなかっただろう。
実際現状でも、よく出来てたというエントリも見かけたしね。
結構、スコセッシの手堅いサスペンス漢気映画として記憶され、『ああマイケル・マンが同じネタを撮ったらもっと渋かったかも~』なんてよく解らないエントリをおいらはあげていたかもしれない。

実のところ『無間道(インファナル・アフェア)』が無いものとして観ればボストンはアイリッシュ・ギャングシンジケートに潜入した男と反対にギャングのボスから送り込まれた内通者との物語として中々に緊迫感もあり、サスペンスフルな漢たちのドラマにはなっていた。

が!やはり『無間道』をリメイクしたということでそれぞれの名場面やシーンがいちいち脳内再生されたりしてわずわらしいことこの上ない(苦笑)まあこれはひとえに『無間道(インファナル・アフェア)』が良く出来ていたということもある。
で、そこまでいうなら観なかったらいいじゃんとも言えるんだけど、やはりあのスコセッシがオスカーを貰ってしまった作品として一度目を通しておきたかった。

で、タイトルに書いたとおり『インファナル・アフェア』が無いもの、または知らない人なら結構楽しめるはずだと思う。確かにニコルソンの演技は暴走気味でやりたい放題ではあるが、これは仕様であり、実際、彼の怪演は映像を他のシーンも含め映画を牽引している。
それにデカプーもインタビューでそう語っている。(正確に言うと現場でも演技陣のイシニアチブを取ってリードしていた)
『ディパーテッド』レオナルド・ディカプリオ 単独インタビュー - シネマトゥデイ | 映画の情報を毎日更新

だがそれだけでオスカーが取れたとは思いにくい
なんとなく最近ネタ枯れのハリウッドがアジアの良質なホンの買い付けのためとここらでオスカーを、しかもリメイク作品であり彼のオリジナル脚本や製作でないものであげるあたりハリウッドソサエティーのなんだかイヤーんな部分が透けて見える(苦笑)

そう、これは監督が言うとおり単なるリメイクというよりB級サスペンスアクションの系譜につながっており、それは監督自身がそう明言している。
本当は作りたくなかった!?「ディパーテッド」スコセッシ&レオ来日 | ウーマンエキサイト シネマ(映画)



たしかに『無間道(インファナル・アフェア)』のリメイクではあるのだが全く違う別物となっていると考えたほうすっきりするしつまりは叩き台として『無間道(インファナル・アフェア)』があったということだ。
観るまでは全く解らなかったが観て納得した。ともかく設定状況とシーンが借り物で中が違うという『無間道』が好きな人達、ファンにとっては同じシーンを見せられてもなんだか凄い違和感を感じる羽目に陥った。(自分のことなんだけど(^^;)『無間道』はその名の通り東洋の宗教観が根底にあるが『ディパーテッド』では、そのテーマは西洋的宗教観となっている。だからわざわざ神父が出たり向うのお葬式シーンが描かれ、その上最初から死というものが強調されている。だからこれは『換骨奪胎』というべきだろう。

まあそれを良しと出来るかどうかは別物で『無間道』の男達の生き様や映像が好きなためそれに引っ張られて楽しめなかったし別段これ傑作だ!とも思わなかったのも事実。
だがそういう方向から見ると結構よく出来た作品であることは間違いない(まあオチは反応の分かれる部分だけど)

最近ネタの閉塞感が漂うハリウッド映画の新たなスタイルとして、面白そうな状況のみを引っ張ってくるこのスタイルはこれから増えそうな感じがする。
ただそこに元のテイストを求めてはきつくなってくるだろうと感じられた作品だった。

どうしたって『無間道』シリーズを知っている人間、特に1作目でやられた人たちにとっては警察側のウォン警部(アンソニー・ウォン)の役回りが2人に分けられたり『無間道』ではそれほど重いキャラでなくタイプキャスト的な警察上層部にアレック・ボールドウィン(最近の恰幅がよくなってる彼にピッタリだと思った)が充てられていたり、ラストがヲイヲイとなったりとかいうことになる。
もっともケリー・チャンとサミー・チェンの役を一つに纏めたりというのは個人的にいい感じだった。これは本家がそうなら最期の『終極無間』がすごく締まったんじゃないかなと感じるけれどまあそれは蛇足か。

『ディパーテッド』は『無間道(インファナル・アフェア)』が無ければ成立し得なかった作品だがそれがあったが故に純粋に楽しむことが出来なかった残念な作品だった。

ということで両方を観なさいとか『ディパーテッド』を観て良かったという人にすぐに『インファナル・アフェア』を観ろ!と勧めにくい(苦笑)
だが先に書いたが個人的には『無間道シリーズ』に軍配をあげる。
これは純粋に好みの問題でありシナリオの優秀さという部分である。
『ディパーテッド』は重要なシーンは借り物だしオチが気に入らない。そこがひねってあれば気に入らないとまでは言わなかったかもしれないけれど。

あとこれでオスカーを上げちゃったアカデミーの中の人達ってのはなんで?と凄く思う。
彼の今までのフィルモフラフィの中でも飛びぬけて素晴らしいとは言えないし(B級の流れを汲んでいるとしたら時間が長すぎる!)確かに役者陣は豪華だしツウなキャストではあるのだが。

前段でも触れたけど出資もしているアジアに向かってどんどんアイデア頂戴?ってこと??
いや、もしかしてコレで上げることによって『ハリウッド・ソサエティー・クラブ』にようこそってそういうオチ?だとするとえれーブラッキーなオチなんですけれど(^^;
そっちの方がよっぽど『ディパーテッド』いやそれこそが『無間道』かもしれない。

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by tonbori-dr | 2007-09-20 23:24 | スルー映画祭り