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ベケットの地獄めぐり『山猫は眠らない3』

なんといえばいいのか。
既に凄腕スナイパーの狙撃をメインにすえた作品には既になっていない。
いやその残り香はあるがそういう話ではない
どちらかというとサブタイトルにある過去との決別がメインでありその過去とはベケットが狙撃兵として戦ったヴェトナム戦争時代の頃にまで遡る。

そうヴェトナムといえばベケット役のトム・ベレンジャーが鬼軍曹バーンズを演じた『プラトーン』があるがそれよりはコッポラのアレがまるまる当てはまる。

実際個々の状況は全く違うが与えられる任務とそのターゲットの類似性は双子といってもいいほど似ているのだから。

もっとも話を神がかりに(ワザと)したコッポラとは違い俗な理由ではあるがそれでも『極端な偏見をもって抹殺』されるターゲットがベケットに示される。

だがそういう地獄めぐりツアーとして見てもある爆弾をかかえたプロの話としても中途半端感があるのは何故『闇の奥』を山猫でやらなきゃならんのよ?というその1点に尽きる。

このあと激しくネタバレしております。特にラストに関する言及がありますので読む方はご了承ください





元々凄腕のスナイパーが押し付けられた新人と任務に挑み自らの犠牲を持って新人を成長させる。これはよくある物語の骨格ではあるがつまりベケットは死ななかったけれど自身の命ともいえるトリガーを引く人差し指を失った、つまりスナイパーとしての命を失うと同時に新人スナイパーであったミラーをプロの狙撃手として遺した。つまりそこで話は完結しているのだ。ただ大人の事情と当時でも『プラトーン』での熱演が記憶に新しいベレンジャーがベケットを演じた事により誰かが気を効かしたのだろうベケットは生き残った。

だから2の時もあれがベケットの物語でなく世捨て人のような元スナイパーと曰くありげな囚人の観測手の話であればもっとのれていたかもしれない。まあこれは余談だけど。

だけど今回は完全にベケットの青春時代、いや彼がスナイパーとして密林で『ワンショット、ワンキル』の掟を課していた時代の話である。だがその導入理由からして貧弱でこれまた政府機関の要職にあるものがベケットに仕事を依頼するとかその後処理とか理由をあげるときりがないがとにかく杜撰なのだ。先になんで『闇の奥』をと書いた、いややってもいいけどそれだともっとキャストもお金もどホンも練らないと。ベッソンクオリティよりも拙い。ある意味最近のセガールクオリティ。だけどセガールはムテキングだからまだ笑えるが(苦笑)

ただクライマックスはゴルゴ13な狙撃テクでケリをつけるとは思っても見なかった。これは驚いた(笑)けどあと処理はやはり杜撰。つうかウェイン町山氏が『地獄の黙示録』のまずいとこはアジア人に対する正しい認識が無いことだと書いてはったけどある意味それよりもさらにまずいかもしれない。
何故ならヴェトナムの古代の風習(但し劇中での言及のためヴェトナムの古代の風習とは思えない)を今風の青年たちでヒップホップ聴きながら踊るような若者がそれに従っているシーンを唐突に出現させるのだから。

ただトンネルネズミに関する言及があったのは珍しかった。
小説などではよく読むヴェトナムのトンネルネズミだが映画で観たのは初に近いので。

キャスティング的には有名人はベレンジャーくらいだがセガールの『沈黙の聖戦』に出たバイロン・マンが出ててここでも同じような役どころ(苦笑)

マニア的には冒頭のバーレットとか最初の狙撃に使うL96A1(もしかするとストックがPMモデルのタイプで機関部(ボルト、チャンバー、バレル)はレミントンかもしれない)に時代を感じるがその後銃を失い調達してきた銃がウィンチェスターM70タイプというのは泣かせる。

特にオススメできないがベケットシリーズはこれで打ち止めかなと思うと(ビデオリリースされたことも含め)付き合ってきた人は一応抑えておいてもいいかもしれないがあんまり積極的に進められない1本。

追記・というかラストのオチ、『地獄の黙示録』のまんまだったようだ。町山さんの本の記述にもそうあって後で確認するとそうだった。はあ・・・。

by tonbori-dr | 2007-05-10 00:31 | スルー映画祭り