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読書感想『惑星CB-8越冬隊』

ということでこれから毎月1冊程度は読んだのをうpしていきたいなと思っているのだがいきなり1月ほぼ読んでないということでやっとこ読み終わったのがコレ。
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惑星CB-8越冬隊 (1983年)
posted with amazlet on 08.02.02
谷 甲州
早川書房 (1983/01)
売り上げランキング: 470652

谷甲州の処女長編SF小説。
最初に目にしたときは文庫本じゃなくて単行本。実はオヤジが買った小説で(うちにはオヤジのかった『復活の日』とか色々ある。)まさか後年自分が読むことになる『航空宇宙軍史』の一部になっていたとは思いもよらなかった。

物語は汎銀河資源開発公社なる組織が雪と氷に閉ざされた惑星、公社によりCB-8と名付けられた惑星が舞台となる。この星に人口太陽を使い気候改造(普通ならテラフォーミングという名前が付くところだが実はその名前でないのも意味がある)をするための惑星の地質、気候の調査を行うために送り込まれた越冬隊の汎銀河人パルパティが主人公。
惑星CB-8
がその楕円軌道(実は太古に真円にちかい軌道もっていたが何らかの理由により軌道が大幅に変わってしまった。ということが初段で説明される。)の近日点を越えたところで大規模な地殻変動が起こり彼らのベース、極点基地を襲い人工太陽が暴走を始めてしまう。パルパティら観測隊の隊員達はその惑星に別に研究のため滞在している地球人ラインハート率いる越冬隊と協力して荒れ狂う永久氷原を行くのだが。−というスジ。
ハードな設定にまるで冒険小説のようなスジ。谷さんといえば最近でこそ架空戦記ものなんかも書いているけれどハードなSF設定に冒険小説のようなスジの物語をよく書いている方。

最初に読んだのは『ヴァレリアファイル』が最初だったかなと思う。今で言う『攻殻』のようなヴァーチャルリアリティとサイバーパンク、サイボーグなどの独自設定とややオタクなハッカーやタフな掃除屋、自信過剰な少女ハッカーにものすごい戦闘能力を秘めた謎の女など楽しく読ませて貰ったが自分が読んだのは角川スニーカー版で今はCノベルズになり角川は幡池裕行氏のイラストだったが士郎正宗になっててビックリした(笑)とこれは余談。

この作品は極地での厳しさがあますところなく描写されまたしばしばこの惑星にいると言う原住生命体の話が出てくるのだがそこから想起されるのは筆者が青年海外協力隊で滞在したというネパール。ヒマラヤの懐である彼の地で着想を得たのだろうなと思うこと。これは行間からも滲み出ているし氏の考えがストレートに出ている。ちょっと青臭いといえばそうなのかもしれない。なにしろこれは初の長編小説だから。
だがそれを補って余りある人工太陽を止めるための極地基地へ向かう道程は臨場感がある。

この小説は『航空宇宙軍史』と打たれているが、直接には『航空宇宙軍』の名称が出てこない。実はこれを読むずっと前に『仮装巡洋艦バシリスク』『巡洋艦サラマンダー』『タナトス戦闘団』などを読んでいたことがある。そこで外惑星連合と戦争している航空宇宙軍しかしらなかった。その後の航空宇宙軍の話も興味があるのだが、ある意味この話はそれらの原点ともいうべきもので色々興味深い発見が多くあった。

谷さんの航空宇宙軍史を紐解くには必要な1冊だと思う。
また単体のSF冒険小説としても面白い1冊としてオススメできる。

by tonbori-dr | 2008-02-02 22:32 | book