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『北壁の死闘』:ボブ・ラングレー

これから毎月1冊くらいづつでも思いつくままに本をご紹介しようかと思い、ともかくなんぞいいのはないかと思ったら本家のライフログに出しているのにしようと思った。
で、最初にご紹介するのはこのボブ・ラングレーの『北壁の死闘』と相成った次第。

この小説は現代(1980年に発表されたのでその辺りを想定している)のスイスアルプスで、アルプスきっての難所として有名なアイガー北壁で登攀中のクライマーがナチスの騎士十字章と美女の写真が入ったロケットを首からかけた氷漬けになった遺体を発見。その日の内に下山したクライマーから連絡を受けた警察からクライマーは事情聴取されたあげく軍の情報機関からも聴取され固く口止めされ遺体は何処ともなく運び去られた。がその話をききつけたBBC(イギリス国営放送)の調査員がアイガーの番組を作るために来た折に噂を聞きつけ興味を持ち調べた結果驚くべき事実が明らかとなった。その物語を記したのが本書である。・・・・・とまあ冒険小説好きなら『あ!』と思う人がいるかもしれない。そうジャック・ヒギンズの名著『鷲は舞い降りた』の出だしも同じように隠されたものを見つけた作家がその事実を掘り起こすという導入部だった。イギリスの作家はそういうのが好きなのかはさだかでないがこの小説、その原書ではヒギンズの推薦文が巻頭にあったとか(役者あとがきより)

それがなくともこの作品は圧倒的なまでの自然と人の戦いだけでなく人と人の戦いを織り込んでいくその手法には目を見張るものがありこの手の小説が好きな人なら魅了されると思う。(これは訳者の方も良いのだと思う。登山用語を巻末に記したり実際に山に登られる方のようだ)
また全てを一度無くした男が極限で見せる勇気、希望?それとも・・・誇り?生と死の狭間で自らの存在を確かめるかのような行動に出る男達。

これは冒険小説としても一級品だが山岳小説としても面白い。
作品は2部構成になっており前半はナチスがある計画のためにクライマーを集め元登山家の主人公たちがナチの山岳歩兵師団の訓練所に集められ再教育をうけるところから始まり後半はナチの秘密計画のためにアイガーに出向くことになる。
そして重要な意味を持つのは原題でもある『TRAVERSE OF GOD'S』神々のトラバースである。これはアイガーにある岩棚で非常に厳しい難所である。
実際アイガー北壁は魔の山とまで言われ登山家たちの挑戦を幾度もなく跳ね付けてきた。
吹きさらしの切り立った山肌に凍った岩肌。ハーケンを打ち込んでもボロボロとくずれてしまうそこではちょっとした手違い、油断が命取りとなる。そんな岩壁に命を賭して挑んだ者たちの物語は今も心に残る。戦争秘話モノとしても山岳冒険小説としてもこれはオススメできる一冊。
『北壁の死闘』:ボブ・ラングレー_a0029748_004945.jpg

北壁の死闘

by tonbori-dr | 2007-03-04 00:24 | book