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今頃ですが『PSYCHO-PASS サイコパス』について

今頃なんだけれど、ちょっと前のクールで最終回を迎えたアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』についてちょっと思うところを書き留めておきたい。

お話は未来の日本。そこはシビュラシステムが人々の心理状態を計測しPSYCHO-PASS サイコパスという値であらわし犯罪を未然に防ぐ。警察官はそれを瞬時に判断し執行できるドミネーターという銃を持って犯罪と戦っていた。そんな犯罪は未然にふせがれているはずの社会で次々起こる事件に立ち向かう刑事たちのお話

とまあざっくりいうとそういう話なんだけど、普通こういう話だとだいたい、監視システムのシビュラがまあヤバイものだったり、それを操る存在、それは巨大人工知能だったり狂った博士だったり、為政者の都合のいい支配システムとかまあいろいろあるけどそんなもんと戦うゼになりがちだけど、放送前に、そこにはいかないと明言されててどうするのかと思ったら…

ダーティハリーmeetルーキwithブルースチールでしたという。
刑事モノの映画が好きな人ならこれで大体分かってもらえると思う。
いやわかんねえよという人もいるだろうからまあざっくりと言うと主人公の狡噛慎也は元々サイコパスの犯罪係数が高い潜在犯と呼ばれる人物ではなかった。そういう係数の高い人間からそれを追う執行官という連中をとりまとめる監視官という役職でありながらある事件に関わり犯罪係数が上がり執行官となった人物。彼が追う犯罪を起こさせそれを観察し、自らの目的のために操る男、しかもその犯罪係数は低く免罪体質と呼ばれる特殊な人間、填島。彼らはどちらも「殺人者」である。この構図は幾度と無く繰り返されたフォーマットであり西部劇、時代劇でも繰り返し描かれた同じ性質を持つ人間同士(やることは真逆だが)そしてそれの代表作ともいえるのはやはり「ダーティハリー」のハリー・キャラハンと連続殺人鬼のスコルピオだろう。

特段「ダーティハリー」を目指したわけじゃないだろうが結果的には狡噛と填島、この二人の対決はやはりハリーとスコルピオを想いおこさせるに充分であり、オマージュになっているなという感じを強く受けた。
となると狡噛の相棒であり上司でもあるが物語り上「ルーキー」の常守灯。
そうハリー・キャラハン演じるイーストウッドが出演した「ルーキー」という映画はハリーを演じたクリント・イーストウッドが新人刑事のチャーリー・シーンを一人前のデカにしていく話で、実は色々アレなところもあるけどクリントファンなら外せない一本。結末も含めて彼女にはルーキーを強く感じた。それプラス彼女にふりかかってくる試練を思わせるのは「ブルースチール」だろうか。
連続殺人鬼にストーキングされ彼と対峙する女性警察官の話でこれも「ダーティハリー」の合わせ鏡になっている映画といえよう。

そういう風にいわばクラシカルな装いさえ感じる二人の対決と観た。もちろん未来の管理社会ディストピアテーマもあるけど、それは舞台仕掛けであくまでも相容れない人物の対決という点では、一種「ダーティハリー」のさらに雛形になっている西部劇や中世から続く決闘モノということが出来るかもしれない。

ただディストピア(システムによる管理社会)が伏流するとそっちとの対決、もしくは二人の決闘をそれに委託したくなる。でも実は二人の戦いはそれにもかかっている。

狡噛と填島の対決はシステム(シビュラと呼ばれている)によって阻止されようとする。だが二人はそれを互いに良しとせずあくまでも対決しようと動く。それはシステムからの逸脱であり反逆である。もちろん殺しあうという結果が良しとされるかはまた別だが、少なくとも二人は決闘する自由を求めるために抗った。

対してルーキー常守はあくまでシステムの中で出来うる反抗(レジスタンス)を選んだ。そういうバランスはちゃんと取れていたと思う。

閉鎖されたディストピア世界でのお話だけどあくまでもクラシカルな話が展開し魅力的なキャラクターも多いのでまだまだこの話は続くのではないだろうかと思わせる作品だった。

by tonbori-dr | 2013-06-27 23:25 | anime&comic