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そこにいる。「モンスターズ/地球外生命体」

先週末に大阪でのロードショーが終わった「モンスターズ/地球外生命体」を観てきた。
この映画はたったの1万5千ドル(約130万円、公開前のレートで)ということで結構話題になり、各地の映画賞でも話題になった。そしてハリウッドで制作される新作ゴジラの監督に抜擢という話もあって気になっていた映画でなんとか時間を作って観たのだが、いい雰囲気を持った映画だった。

実際には1万5千ドルの制作費ではないそうだけど(監督インタビューより)独特な雰囲気と視点をもってて、先に観ていた「スカイライン-征服-」と同じような少ない予算で少ないスタッフ、VFXを駆使したという共通点がありながらまったく違う映画。
スカイラインは視点が限定されているけど、こちらは視点が広い。あくまでも主要な登場人物2名だけなんだけどメキシコからアメリカまでの道程を淡々と描くことにより世界を切り取っていく様は世界の拡がりを映し出している。

物語はNASAが地球外生命体(どこで発見されたかは明言されていない)を地球外で採取。それを地球に持ち帰るための探査機が大気圏突入時にメキシコ上空で大破し、メキシコで謎の生命体が繁殖。アメリカとメキシコの軍隊は封じ込めようとしたが繁殖を喰い止めるまでに至らず壁を作って都市部と隔離した。それから6年後、取材に来ていた新聞社のカメラマンが現地で怪我をした社長の令嬢をアメリカまで無事に送り届けよといわれるがトラブルのため安全なフェリーに乗り込めず「危険地帯」を陸路でアメリカ国境に向かうことになってしまう…

この道中が本当に上手く出来ていて、そこに住んでいる人たちや、国境を越えるためにいろんな人づてに向かうわけだが、その密輸業者(スマグラー)たちも含めての描写がまるでドキュメンタリータッチ。最近流行で観るといささか食傷気味の揺れカメラも、ストーリーに密接に関係していてぜんぜん気にならない。いや実は中盤ではさほどゆれていなかったりするのだけれど。それにメキシコパートでは主役以外は現地でのエキストラさんにやってもらっているそうで、それがいいテンションとリアリティを生み出している。

またアメリカ国境地帯でのシークエンスも廃墟とかした町がでてくるが、あれはツイスターか何かで被害を受けた町で撮影しているのだろうか?多分日本ではそういう撮影は不謹慎ということでしないだろうけど、明確に伝えたいことがあるならばこの手法は正しいと思う。

この映画にかかわったクルーは5人。それと俳優が2名。このミニマムな体制でも見せたいものとストーリーがあればここまで出来るということを証明して見せたギャレス・エドワーズの名前は、今製作されようとしているハリウッド版ゴジラの監督としても覚えておいたほうがいいかも。

パンフレットは販売されていなかったので公式サイトにいったいろいろ知ったがエドワーズ監督はBBCなどでVFXの仕事をしていたのだそうで、ロケハン、撮影後に自宅の地下で作業を重ねたのだそうだ。その仕事振りは丁寧でCGながらも街並みにすっと馴染んでいる。その部分だけでも彼に新しいハリウッドゴジラをまかせてもいいんじゃないかとも少し思った。

それはいわゆる怪獣が暴れてドカーン、ドカーンのベイっぽいものでなく怪獣が現れて、さてどうする?どうなる。または怪獣が現れた事によってどうなっていくという部分を上手く切り取っていくのじゃないだろうかと。それこそが怪獣映画の本来の姿で、TVドラマ『MM9』後ではそれが一番しっくりくる。
だからこそ『MM9』が好きな人はチェックするべきじゃないかな。

ちなみに各地を巡っているようで大阪での公開は終了したがまだ公開中もしくは公開間近のところもあるので怪獣好き、特撮好きのみならず映画好きなら観て欲しいなと思った1本。

「モンスターズ/地球外生命体」の映画詳細、映画館情報はこちら >>

追記:ドカーン。ドカーン。ボーン。状況開始!でないと!という人とか、行間読めない人はやめといた方がいいかもです。蛇足ながら。

by tonbori-dr | 2011-08-20 01:27 | Movie