奇跡は起こすものである。「インビクタス負けざる者たち」

すみません、タイトルがネタバレです。
それに実は長いので省略したけど、「奇跡は起こるのを待つものではなく、自らが起こすものである」というタイトルを考えていた。

この話はリアルタイムで覚えている人も多いかも。
現に私はこの中で南アフリカのスポーツ大臣とマンデラ大統領の会話中にでてくる、日本の記録的大敗をよく覚えてる。というかオールブラックスの強さは異常で、本当に世界王者の風格を持つチームで南アフリカの勝ち目は殆ど無いと思われていたのも事実。だけど結果は…。
真実とは小説よりも奇なり。まさにそれを地で行くストーリー。まさにNHKスペシャルとかで取り上げられるべき話。「奇跡体験アンビリーバボー」なんかでは30分弱で要点がまとまってしまう。
そんないわゆる「この物語は事実を基にしている。(This story has been based on actual events.)」という話を堂々の語り口のイーストウッド節でつづっていく。

この映画を見て自分は、マンデラという人の底知れぬ凄みというものを一番に感じた。赦すと言う行為。殆どの人は疑心暗鬼、本当に赦してくれるのか?と疑ってかかる。普通なら釈放されて、そこから自分が大統領になったら迫害した者たちを迫害してもおかしくない。やっと自分たちの時代が来たと思ったけれど増員を頼んだら白人の自分たちを迫害した秘密警察から応援が来て憤懣やるかたないSP。しかしマンデラは確固たる信念をもっているので彼が執務室に乗り込んできても普通に構えて諭す。また国家スポーツ評議会でアパルトヘイト時代の負の遺産ととらえられている、ラグビー代表チームスプリングボクスを葬り去ろうとする人たちに理を諭す。彼は秘書にもし1票でも相手が上回ったらどうしましたと問われて、ならば民意に従うといったけど、全然勝算がなかったわけでは無いだろう。でなければ、会場内に自分のシンパを置いて連絡などさせはしない。ここでネルソン・マンデラの恐るべきバランス感覚と政治的才覚が発揮されている。彼はちゃんと計算しているし、どうやって勝てるかの確率を上げれるのかきちんと計算している。また物事のスパンを長く捉えることも出来るが、今は積極的に動く時期ということも心得ている。また自分の年齢を考えても道筋だけはつけなくてはならないと。そのためにはどんなことでもやってのける信念をもっている。そしてその事が繰り返し描写されていくのだ。普通27年間も獄に繋がれていれば、荒んでいたり、報復を始めてもおかしくない。だがそうはしなかった、その怒りを前へ進むエネルギーへと転化している、そんな彼の凄味はモーガンによって引き出され演じられたと言ってもいい。そうマディバ(マンデラの敬称)にそっくりで彼から私を演じてほしいとまでいわれたモーガン・フリーマンの演技は力みの無いされど威厳を持ついい佇まいだった。そこもイーストウッド印。もちろんキャプテンのピナールを演じたマットもしかり。

そして今回もクリント・イーストウッド監督は淡々と派手な事をせずに手堅く、演者の良いところを引き出す、結果派手なシーンがあってもベストの演技が引き出され、深い余韻を産む。もう老練の域といっていいけれど、今回もそのイーストウッド節というべき演出で淡々と、しかしダイナミックな物語が綴られていく。

名の在るキャストはモーガンとマット以外には殆どいないけれど、大統領秘書(首席補佐官)の人とかSPチームの黒人リーダー、ジェイソンや白人リーダーの人とかね、皆さんいい演技する。そこがやっぱりイーストウッドのマジックだなと思うところ。そんでパンフに書いていたけど実は息子が出てるとか。音楽にカイルが関わっているのはここ最近の流れだけど、そうかという感じ。そういえば娘さんとも共演してるんだよな。そういう親バカな部分があってもまあいいやと赦せるよ(笑)でオスカーノミネート逃したのはそのせいかなと(爆笑)、まあ今回アカデミーに作品賞としてノミネートされていないのは多分、お話がやはり偉人伝的な部分と役者に頼っているかのように見えたのかもしれない。実のところちょっと説明不足かな?というかやはり話としていい部分が強調されているように見えて、もちろん嫌なところもあるんだけど若干そういう痛い部分が少し薄めに思えてしまうので足りないと思ってしまう部分もあったけど、そこがマイナスなのかもしれない。

しかしこの話をただの深イイ話だと思ってみるのではなく、普遍的なしかも人間力が奇跡をも起こすというその瞬間を追体験するという意味で観てもいいと思う。奇跡 は待つのではなくまさに人事を尽くすという当たり前のことを描いているだけなのに、ちゃんとしっかりとした映画になっているのはさすがクリントとしかいい ようがない。この作品は今年劇場で観るべき映画の1本としてオススメできる。
いや年に1度イーストウッドの新作が観られるとはなんと幸せなことよ。この幸せが少しでも長く続きますように。

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ちなみにこの作品を観に行ったのは2/11。これは最初からそう決めていた。
何故かはネルソン・マンデラでぐぐってみると分かると思う。
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by tonbori-dr | 2010-02-16 21:27 | Movie