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*米国裏英雄列伝。『ウォッチメン』

『300』のザック・スナイダーが仕掛けたグラフィックノベル『ウォッチメン』の完全映画化。時間にして163分分のまさに超大作。
これまた同じDCの代表的ヒーロー、バットマンの『ダークナイト』の時もその152分は時間を感じさせなかったが、これもまたそうだった。
だが同じ事を繰り返して書かせて頂くと、物理時間は短くならないので、これから鑑賞しようかと言う方は観る前に用を足しておかれるのが吉です(笑)

で、アバンタイトルからタイトルロール。アバンで事の発端をじっくり描いていったと思った瞬間にモーションが急に早くなる。まるでアメコミを見ているようで、色々アメコミ、グラフィックノベルを映画化した作品を観てきたけれ画面がまるでコミックブックのようだった。言ってしまえばミラ・ジョヴォの『ウルトラヴァイオレット』の時もそう感じたけど画面の構成の隙の無さと情報を置いていく様は、動く、大友克洋、いや士郎正宗的な漫画の画でさえもある。パンフレットなどでもスナイダーは原作グラフィックノベルのようにするために腐心したといが、それだけの事はあった。(ちなみに原作は未読、でも値段がもうちょっと安かったら即買いしていた。アメリカ本国版もamazonから購入できるけどそっちの方が安いけど解読に時間がかかりそうなので断念。)

そこからのOPタイトルでミニッツメン結成から第2次世界大戦終了後、ヒーローたちの活躍が表も裏も語られていく。あまりの駆け足加減に、もう一度となるのだけれど残像のようにそれが頭にちらついてくるのが後半効いてくるが、ここが結構関門で多分あまりの駆け足ぶりに普通のお客さんはついて来れないんじゃないだろうか。よしんばカットしてもいいのだけれど、この部分があるから後半に効いて来る伏線もあるわけで、そこまでしても原作通りに入れ込んだスナイダーの執念を感じる。

架空の戦後を歩んだといえば押井監督の『立喰師列伝』を思い出す。この『ウォッチメン』は架空の戦後史を歩んでいくことによりヒーローモノ体裁をとりながら歴史を再検証しながら、それ以上に英雄という偶像に迫っていく作品であり、偶像としての立喰い師を描きながらも歴史の追う仕立てになっている『立喰師列伝』とはちょうど入れ子の関係にも感じる。わざわざ実写を2次元なのにさらに2次元に仕立て直す部分と紙媒体に描かれたヴィジュアルをスクリーンに表出されたその手法までもが対照的。

そして膨大な情報量を封じ込めるためにあえてグラフィックノベルの構図にこだわり情報をそこに封じ込めていったと思えば、やはり繰り返して観たい誘惑に駆られる。とは言えやはり長尺なので実際に公開中にもう一度足を運ぶかどうかは分からないが(苦笑)だがそれだけの濃さは保証できる。





毎度おなじみ余談

ウィキペディアに当たってみるとキャラクターたちのモデルはDCが権利を買った別のアメコミヒーローで、例えばそれは観た時に感じたように思ったようなキャラクターではななかったが、大筋としてはそれらのキャラクターも含めているとのことらしい。
まあナイトオウルがそのシルエットからしてバットマンモチーフなのは間違いないけれど、それと共にスパイディ的なチェリーボーイな部分(力を持っているのに自信が無く弱弱しいけどマスクをかぶると変身するあたり)も持たされている。そして世界一賢い男、オジマンディアズはスーパーマンの聡明さとバットマンが陥りそうになった闇の部分を持つキャラクターとも取れる。だがこの作品の白眉はDr.マンハッタンことジョン・オスターマンにつきる、超越した力を持つ存在として、例えば異能の力を持つ存在としてのスパイダーマンや超能力を持つスーパーマンが力を持つ者は世界を救い、良き事成さねばならないという義務以上に国家と密接に関係しながらも、その力ゆえに疎外され、また自身も力を持つが故に乖離していくという非常に興味深いキャラクター。
そのちからはウルトラマン的でもあるが、元は人であったということを考えるとジャミラに近い。そう考えるとウルトラマンなどもそういうヘビーな話がセブンや帰りマンまでは色々あったなあ思い出すが、今の日本でも『ウォッチメン』的なるものはまだまだある。
そう思えばライダーシリーズ辺りは正義の危うさを良く描いているし日本発として期待したいところではあるが。

そしてちょっと思い当たったのはロールシャッハって語り部ではあるんだけれど自警としての部分を見ると、やはりダーティハリー的だよなと凄く感じる。
演じるジャッキー・アール・ヘイリーもしわがれ声で背は低いものの立ち振る舞いとかダークサイドに落ちたハリーっぽい。この辺は別館に書いているので、まあよろしければ、アメリカの映画に良く出てくるモチーフ、選択に絡めて自警団のことも書いてます。
Web-tonbori堂別館: 『選択したその先に』tonbori支配人の映画四方山話

あとね、押井監督もコメント寄せてるらしい(笑)
映画『ウォッチメン』公式ブログ:著名人絶賛コメントが続々登場! - livedoor Blog(ブログ)
面子がねー押井さんと金子さんとかまでおおっと思ったら以下
福井晴敏はいいとしても、和泉元彌ってのがなんともはや(笑)だが他にも永井豪先生に谷隼人氏に佐藤元は久しぶりに名前を見たぞ。内藤陳師までも。ただ203分って時間をまちがえていらっしゃるけど…はっ!もしかすると既にディレクターズカット版を観たのかも(笑)

「ウォッチメン」の映画詳細、映画館情報はこちら >>

by tonbori-dr | 2009-04-17 01:29 | Movie