*これぞクローネンバーグの『男達の挽歌』『イースタン・プロミス』
実はこの夏に観ていたんだけれど色々考えていたらその後『ダークナイト』や『スカイ・クロラ』に『クライマーズ・ハイ』などが続きすっかりUPを忘れていた。
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のコンビが放つ英国を根城しているあるロシアンマフィアのファミリーのお話。
これがまた見せてくれる映画で世間一般的には主演のヴィゴのロシア式サウナ場でのフルチンセメント(真剣勝負)が取り沙汰されるがこの作品の凄みは全篇に渡る陰鬱ですっきりしないロンドンのダウンタウンでの描写。
イギリスの映画やイギリスのドラマ、またはロケ地ロンドン(笑)な作品をよく観る人はご存知だろうが何故かイギリスの作品ってスッキリブルースカイじゃないのが多い。
もちろんイギリス自体が天候がそういうとこもあるんだけれど、ここまで来るとわざとそうやっているとしか思えない。
そういう一種湿った感覚が日本の湿り気とはまた違う硬質な湿気を産んでいる。
そう口の中に鉄の、金属の味がするような。
ヴィゴがこの作品でオスカーにノミネートされたのもうなずける演技にはまったく下を巻く。謎めいたロシアン・マフィアの運転手兼トラブルシューターとしてふてぶてしいまでの姿と、ちょっとした時に見せる優しい顔とのギャップが素晴らしい。
そりゃあ、世のご婦人方が惚れるってもんだ。
唯一、ヴァンサン・カッセルが演じるキリルとその父親でロシアンマフィア『法の泥棒』の頭目セミオン演じるアーミン・ミューラー=スタールが親子に見えなかった(^^;
とはいえそれは些細なこと。
またナオミ・ワッツが重要なキーを握るのだが、同時に狂言回しでもあり物語を前にすすめる重要な役どころを上手くでしゃばらず、かといって薄くも無く演じているのも好感がもてる。
ある意味、香港黒社会モノにも、またはマフィアの映画でも繰り返し語られている物語ではあるがそれだけにキャストの力と監督の構成力が重要。
その点では、ロシアンマフィアのタトゥーが持つ意味や、イタリアのコーザ・ノストラに通じるファミリーのような関係が物語の厚み出している。
むせ返る様な男達の生き様は香港ノワールや本家ノワールにも劣らないクローネンバーグのノワールとして素晴らしい作品だった。
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by tonbori-dr | 2008-10-09 21:37 | Movie