人気ブログランキング | 話題のタグを見る

*ネタがハリウッド指向だねえ ベクシル2077-日本鎖国-

まずエヴァじゃなかったヱヴァでなくこの映画を観ようと思ったのはCGアニメがどの程度か気になったから。基本的にフルCGでするにしろリミテッドにするにせよ既にデジタル化が進んでいるご時世。この手法のアニメも増えるだろうし『エクスマキナ』を観るならこちらも観ておくかという話。じゃないとエントリにも出来ないし。

いやびっくりした、この映画かなり本気で外国マーケットを考えている。
主人公は米軍の特殊部隊に所属して日本はその行き過ぎた技術をもって鎖国している。
日本発でこの設定、普通はありえない、世界が破滅しようとも地球を救うのは地球防衛軍所属のほぼ日本人の乗組員で構成された宇宙戦艦だったりする。
しかしこの物語の設定はどっかのゲーム機かミュージックプレーヤーのように『世界標準』だけど映画の『世界標準』は日本のアニメの標準ではない。

フルCGアニメーションはピクサーとかそういうほのぼの説教系かお笑い説教系、アクションにしたってファミリーなものだ。
だがこれはSF近未来アクションだ。ハリウッドならビックバジェットで大物監督または大物プロデューサーでないと実現しない映画だ。

これは『アップルシード』の時にも思ったけれどリミテッドアニメとの親和性をどうとるかホン次第。このホンはハリウッドというか外国では受けるんじゃないかなとは思った。音楽も『アップルシード』とよく似た感じであるしセンスも向うっぽい。
まあポール・オークンフィールドが噛んでるし当然か。

映像に関してはもっと言及されても良いかなと思うものの結局皆こういう映画を観に来る連中は頭から『ああそういう映画ね』と思う人が多いのか辛口なわけで(もちろんおいらもなんだけれど)で、その他の人たちはやっぱり漫画でしょ?みたいな感じなんだろう。それはヱヴァのように固定されたお客さんがついている訳でもないしそれを軸に動く緩やかな潜在層もいない。そういう意味ではこの国のそういうお客に対するフックが少ないなとは思った。まあそのためのキャスティングとかそういうので頑張ったんだけどディズニーのように家族連れという感じでは無いし正直それだけではフック足り得なかったなという感じがした。




キャッチコピー、サブタイトルのハイテク鎖国。まあそういうもんですかと。そのなんというか実は鎖国しているけれど世界はその日本のハイテクに依存もしているみたいな。なんとなく某資源の話を思い出すけれど、そこから転がすのでなく結構狭い部分でオチがそれかいというのはやはりこの話『エクスマキナ』として最初のプロットが用意されていたけれどジョン・ウー師父が関った段階でボツった話を曽利監督がピンポンとかでコネのあるTBSとかを巻き込んで作ったのかなとも思う内容だった。いやもしかすると『アップルシード』に入れるはずのボツネタかもしれない。
まあ状況だけは大変になっているが話自体はそれほど難しくは無いし、難しいのは登場人物たちのおかれている状況である。閉鎖された場所に何かの陰謀を察知して主人公突入、でピンチにあって助けられある程度の事実を知り、劣勢の中から反攻というまんまハリウッドスタイル。だがこのクラスのSFアクション映画なら少なくともベイのこけた映画『アイランド』クラスの予算が必要だろう。まさにアニメーションとは少ない予算で効果的に大きな話を創り出せるスタイルでもある。だけどそういう単純な話が実写ではよくあってもアニメではもうあまり作られない。既に潮流は別のところに移っている。まあこちらも懐古なオールドタイプなんで最近の流行は解らないがそのオールドタイプが観てもちょっと古いなと思うのはどうでしょう、そうでしょう。いや骨格が古いのに外側は新品?ちょっとアイデアだけで突破してみましたみたいな、感じがする。

しかし映画『ファイナルファンタジー』の例のように実際にはこういうフルCGアニメーションはどちらに軸足を取るかでこの手の映画の主な観客層であるオタクへ取っ掛かりが決まってしまう。一般のお客さんにとっては子供をつれていけるかどうか?もしくは話題になってて観に行かないと遅れた気にさせる映画でないとアニメには普通いかない。ということで嫌でもオタク層に訴求しなくちゃならないのに中途半端なキャラクターメイキング。落としどころして今回のキャラメイキングになったそうだけど(ソースは毎度おなじみ前田氏の超映画批評超映画批評『ベクシル 2077 日本鎖国』65点(100点満点中))ここで触れられているもっとセルアニメ寄りというのは納得できる。セルアニメというかキャラデザインいれてのセルアニメタッチのデフォルメをするというほうがオタ層への喰い付きは良かったんじゃないかな。

CGの得意技、メカニックアクションの描写に関してはかなりいいとは思うし悪くは無いけれどCGなら出来て当然と思われてしまうのでもう一つヒネリが欲しかった。
それでもアクションはちゃんと成立していたのはさすがモーションキャプチャとトゥーンシェーダーの威力。実際いくつかのシーンでは惚けたように画面に見入ったほどの迫力。お約束のトンネルもあり外骨格タイプのパワードスーツの造作も結構力はいっている。絵コンテ設計はさすが曾利監督と思ったが、これで樋口真嗣が絵コンテ切ってたらとかも少し考えた。これが実写で人がやってたらすげえなんだけどもう少し自由度があってもいい。どこかで観たような映像をきっちり作り込むのもワザだけど、折角のCGなんだから。

配役に関しては以外に谷原章介がアニメ好きと見た、なんか微妙にあってるんだよなあ。あと松雪泰子が渋い声でがんばってるなと、主役のベクシルの黒木メイサもまあ目くじらたてるほどじゃないといっときたいがちょと声が軽いか。脇は大塚明夫さんがちょっと気張りすぎな演技だったけど日本側のキャストはいい感じ。朴璐美がいい芝居をしていたな。

ラストには異論もある人もいるだろうしおいらもオチがそれかよとは思ったがなんせ小さいスケールで監督見てないのでそうなったんでしょうなあ。
けども監督が言ってた情報が遮断される恐れ、恐怖というのはあまり伝わってこなかった。しかも黒幕があれではちょっと興醒めもいいところでもう少し捻って欲しいもんですがまああまり難しくすると外国でウケないからね。こんなもんなんでしょうと投げやりに言ってみる。

意気込みだけはという感じだったが、実は大絶賛なエントリにあげようかなと思ったりもした。
この手の手法ってやはりこれからも必要になるわけだしもうちょっとリミテッドセルとデジタルの上手い融合は出来んものかなという意味で。でもやっぱ無理だったな。まあこれからもめげずにやって頂戴ということで。

あと、これを観たんでヱヴァ観たらは超絶賛するんじゃないか?おれみたいな気がする。

by tonbori-dr | 2007-09-15 00:18 | Movie