リアルとリアリティの狭間-ユナイテッド93感想-

9.11でハイジャックされた4機のうち目標と思われる場所に到達しなかったユナイテッド93便で何があったのかを描いた映画。
それが本当に機内であったことなのかどうかは解らない。
しかしハイジャック時に機内電話や携帯電話で地上の家族や会社、友人に連絡をとった人たちの会話を遺族に取材しさらには当日の連邦航空局や管区の管制官たち、通報をうけた防空司令部などの対応も挟みながら映画は進む。
まるでドキュメンタリーを観ているかのようで、言い方は悪いが再現フィルムというやつである。
しかもこの話の結末は我々は知っている。それでもこれは下衆な言い方をすれば野次馬根性だしその時い起こったことを知りたいという欲求は少なからずあるのは否定できない。
そこをうまく突いたしそのために真摯に製作することを要求されただろうがポール・グリーングラスはその条件をよくこなしたなと思う。
そしてその冷静な目で淡々と状況を見据えていく。その作風も今回の映像化にうまくおさまっていると思う。これはアメリカの人ではそうは行かなかっただろう。やはりイギリス人という外国の目からだからこそ出来たと思う。

こういうリアルとリアリティの狭間見せ付けられた映画は記憶にあまり無い。



あれから6年というべきかそれともまだ6年なのか(実際映画がつくられたのは5年)、個人的な感想としてはよく出来たなと思うし日本ならそういう作品は作られただろうか?ナイーブなそして情実的な日本人では遺族の証言やその人となりを再現することは出来てもその最後の部分までを描ききることは難しいのではないか?それを撮る者たちがいたとして色眼鏡で見られることは避けられないしそのリスクを引き受けることが出来るのだろうか?そんなことを感じた。


しかしあえて野次馬的好奇心で言うと前半にWTCに突っ込んだ2機を含めてのハイジャックが起こった時の周りの反応はかなり興味深いものがある。
まず連邦航空局の管制ルームがボストンの航空管制官からハイジャックのおそれありと一報を受けともかく情報収集に動き出すが飛んでいる飛行機とはレーダーのブリップ(輝点)と割り当てられた無線チャンネルのみ。そしてハイジャックされたアメリカン11便からは僅かな会話しか取れなかったがその疑いが濃くなってきた時点でマンハッタンでロスト。そしてWTCからは煙が。2機目が追突するに至って事態の深刻度を悟ったFAAの管制ルームは他の機体がハイジャックされていないかアメリカ全土の空を飛んでいる4500機あまりの航空機のチェックを実施(返答の無い航空機を重点的に)する。

そして当日ノーラッド(北米防空司令部)は演習(しかもロシア!の爆撃機が侵入するというものだった)だったのだがハイジャックの一報が入り戦闘体制に移行。火器管制班に準備をする旨命令している。でこのあたりの描写、FAAは軍の連絡将校は何処だとといって情報の共有化を図ろうとするが軍は軍で断片的な情報(無線から拾ったりまたは無線から直接通報があったと思われる)で混乱の極みに達し追突をCNNで見ることになる。
その後撃墜命令をとる為に上層部(命令権を持つ大統領とその次席になる副大統領)とコンタクトを取ろうとするがなかなか取れないあたりなどはかなり興味深い部分だった。いやよく映画(あくまでもフィクションの映画の話として)結果えらい人と連絡取れなくて状況が悪化してしまったり、正義の人が独断専行してでも結果オーライで済むとかそういう事が再現されているのは森と海サンがエントリ〔*誤解を恐れず言うが・・・〈 ユナイテッド93 〉は面白い** 日刊【考える葦】Returns〕で書かれているように色々含むとこがあんのかなと邪推したくなる。が実際には情報共有とかいってもデータリンクとかしてないんだなというのは良くわかった。(もっともネットなんかでつなぐなんてえのはこんな事が起こっても多分ないだろうけど。)結局日頃どんだけコミュニケーションが取れているかにかかっているのねとそういうことだねと。
この部分は前半部にユナイテッドで事が起こるまでのいわば前振りであったが野次馬的好奇心がいたく刺激された描写だった。しかもこのシーンで出ている人は実際の管制官や軍人たちだというのだから本当に恐れ入る。よく映画に出たなと思った。彼らは多分彼らなりにベストを尽くしたがそれでも犠牲の大きさにあらためてあの日何があったのか彼らなりに振り返ることが必要だったのかも。

あらためてポール・グリーングラスはすごい仕事をこなした。
ともかく今後も9.11に関する映画は作られるだろうがこの作品はいろんな意味で後々まで残ると思う。そしてその上で人は色々な事を知りたい動物なんだなということを知る、
そこで本当のこと(リアル)と本当にあったかのように描かれた事(リアリティ)がその狭間が、揺らぐ瞬間を垣間見る、そんな映画だった。
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by tonbori-dr | 2007-06-11 01:12 | スルー映画祭り