総天然色の夢『嫌われ松子の一生』

最初に言っとく。なぜか北村龍平の『ALIVE』を思い出した。
多分中島監督はラストシーンを撮りたかった。
というか原作を読んだときに映画のラストシーンが浮かんだんだろうと思う。
パンフにはそんな言及ひとことも載っていないしそんなそぶりもないけれど。
だからこそあのままの状態で突っ走れたと思うのだ。

『下妻物語』の色彩豊かないささか彩度と輝度の高い画面にどことなく作り物っぽい映像。
そしてそこに本当に作り物の映像を挟む。しかもそれが親和しているかといえば全然していない。さらに作り物めいている。
『下妻』の時よりもさらにネジを巻いたように時間が超スピードで流れていく。
その流れはエンディングを迎えるまで止まることがない。まるで止まると死んでしまうように。

女優中谷美紀の脳にはドーパミンとエンドルフィンが出捲くっていたんじゃないか?
というかかなりヤバイ感じもした(笑)



ようするに荒川で死体となって発見された東京の足立区日出町の独居していた川尻松子という女性の生涯を暴走機関車のように綴った映像譚。

詳しいあらすじは省略するがともかくその場をしのぎのウソやらいきあたりばったり計画性のない行動をとり続け最後には死んでしまった松子という女性。
しかしその全ては病弱な妹(市川実日子)へのコンプレックスでありその妹ばかりを可愛がる父(柄本明)へのファーザーコンプレックス。そして死ぬほど渇望していた愛情。それが彼女を突き動かす原動力。それらをミュージカル仕立ての演出が『下妻』よりさらにパワーアップして投入されガンガンかかりまくる。そして松子パートはテンション爆烈のままに進行しまわりはそのペースにまきこまれるだけ。完全自己完結型の主人公を中谷美紀が熱演。というか結構監督とやりあったとか公開後の記事とかにも書いてたけどなるほど納得。

ただし松子がそれまで辿った生涯の出来事や最後にたどる運命などを考える人にはキツイだろうしざっとネットで検索してみてそういう意見の人もいた。あと音楽うるさすぎとか。

で相対的に言うとどうしようもない女のどうしようもない一生でそれを全部肯定はとうていできないけれどそれでもあんたはあんたなりに一生懸命に一所懸命してきたねという感じがする。
とそれだけだと多分ふーんで終わってしまうのだがそこで最初の『ALIVE』に戻る。
この『ALIVE』という作品は北村龍平がアニキと慕う高橋ツトムの原作をまだ全然知り合いになる前に『VERSUS』の次の構想を練っていたときに読んで直談判して映画化した作品。
でこの話はあちこちでしているので知っている人もいるかもしれないけどラストシーンはこうしたいと言ったそうだ。それでツトムさん「いいよ、お前にやる」と言ったんだとか。
内容的には拓ちゃん演じるあるキャラが唐突に出てくる部分とかで結構ボロクソなんだけどおいらはこの映画好きだ。
でそのラストシーンとこの映画のラストがどうしてもだぶる。全然違うのに。
多分それは監督がこうやってオチもしくはしめをすると決めていてそれがきれいに決まったからなんじゃないかなと思っている。
その意味では中島監督はどうあれちゃんと撮りきったということだ。なのでキャラとしてはどうよと思うけれど中谷嬢のエンドルフィン演技と撮りきった中島監督の満足感は評価できるよなと思うのだ。

あとキャストで主題歌を唄っているボニーピンク(最近エビちゃんのCMソングとかベスト盤が出てブレイクしている実は10年選手のシンガー)が松子の同僚のソープ嬢役で出演しているのだがそこの店長がスカパラの谷中敦。演技に関しては正直どうかと思うがあの独特な存在感は確かにソープの店長だなと納得した(笑)また古い演技するのは監督の演技指導なんだろうか?
本田博太郎さんもでているんだけどあまりにもその使い方が贅沢すぎるなあと思ったら、BOBAさんまで一瞬出ているんだもんそのシーンはもうククっと笑ってしまった。ちなみに『ALIVE』の主演榊英雄もちょい役で出演していることも記しておく。

で最後にもう一つこの映画の製作委員会に名を連ねているのは『TBS』だった上に柴咲コウもでていたことを最後に記してオチとしたい。

追記:
そうそう書き忘れていたけど唐突に木村カエラそして現代、若者たちそして、OPのタイトルロールが昔懐かしのコロムビアとかパラマウントとかの映画を彷彿させる書体(インライン系)をつかってそこから映画に引き込まれるパターンは見事。もし内容がダメでもあの手法はまったくもってけれん味たっぷりでわくわくさせてくれる。さすが元CMディレクター。欲望を刺激するツボを心得ている。
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by tonbori-dr | 2006-08-07 22:31 | Movie