という事で、本日(7/30)土曜日のお昼の回で観て来た。IMAXと迷ったが近場ではないし、いろいろ事情があり遠くへ行くにはちょっとはばかられるという事で市内のTOHOシネマズへ。でもTCX館じゃなかったんだよなあ。ってことで後日そこはきちんとしておきたい。
まずはこの後ネタバレになっていくので(具体的には避けるが)その前にネタバレ上等っていう方もまずは初見で感じてほしい。おいらは最初の『ゴジラ』(いわゆる1954ゴジラ)を観た時は既に『三大怪獣』や『怪獣大戦争』を観ていたにも関わらず、全然内容を知らなかったので、非常にショックを受けたことを覚えている。あの最初に大戸島で上半身だけの峰に現したあの異形っぷりには、「これは何だ?」と思ったものだった。それまでの主に映画館とTVで観たゴジラはもっと親しみやすいものだったので非常にショックを受けたわけで、あの筆致やスタイルはやはり怪獣映画を作る上でのマストと言うべきものだと思う。今回の『シン・ゴジラ』もそれに則った、その上での作品であるのでまずは初見で感じてほしいと思うのだ。つまりは『ゴジラ』という今までの概念がある、もしくはあまり興味もなく普通に火を吐く怪獣くらいしか思っていない状態で。その上で空想でしか思いつかないような今のこの状況で怪獣という異形がが現出したら一体どうなるんだ?というサスペンス、そして未曾有な危機とそれを受けて立つ人々のスペクタクル。それをまっさらで確認して欲しい。ちなみに自分の観たかったものは全部入っていた。
てにおはとか少しだけ文章修正しました。
2016.08.22 23:10
という事でちょっとネタバレ的にふれつつ。
少し改行してから…。
と言うか、そこはそれ、やっぱり一般人の意見が気になる部分が多い映画だった。自分は凄く満足だったし、現在、怪獣映画をやるにはこういうモキュメンタリーっぽいもしくは徹底的なシミュレーション的な作劇でないと没入出来ないだろうと思っていたからだ。押井監督ともに庵野監督リスペクトな本広監督の『踊る大捜査線』でも結局は現場で頑張る人を活写するには手続きをどれくらい描写できるかという部分で勝負していて結果、あの名セリフが生まれたが、今回の会議シーンの多さは、本家が本気見せたら『会議』はこんだけ凄いんやぞというそっちへの返礼っぽくも見えて面白かった。
それだけではない1954ゴジラからして、そうやって作られていた。太平洋を航行中の貨物船が突如、行方を絶つ。前年にあった明神礁の爆発で船が巻き込まれた事案を想起させる導入部に、現場海域の近くの大戸島の異変、そしてそれを調査する調査隊に、それを派遣決定するまでの国会での会議、また当のゴジラから検出された放射能は当然ビキニなどの核実験とそこからの第5福竜丸の被曝を連想させ、国会での公聴会が、『かの国』に遠慮する与党勢力と公開すべきだという野党勢力の描写に一般市民が電車での会話など世間の反応までも描く十分すぎる演出だ。などなど。そういう部分を2016の時代状況(当然その間にあった災厄も含めて)描写は細緻にわたって再現されていったのだろう。
そもそも1954年の初代『ゴジラ』からして、そうやって作られていた。1954ゴジラの発端はこうだ。太平洋を航行中の貨物船が突如、行方を絶つ。前年にあった明神礁の爆発で船が巻き込まれた事案を想起させる導入部に、現場海域の近くの大戸島の異変、そしてそれを調査する調査隊に、それを派遣決定するまでの国会での会議、また当のゴジラから検出された放射能は当然ビキニなどの核実験とそこからの第5福竜丸の被曝を連想させ、国会での公聴会が、『かの国』に遠慮する与党勢力と公開すべきだという野党勢力の描写に一般市民が電車での会話など世間の反応までも描く十分すぎる演出だ。などなど。そういう部分を2016の時代状況(当然その間にあった災厄も含めて)描写は細緻にわたって再現されていったのだろう。
『シン・ゴジラ』前半はこのままではらちが開かないどうするんだという前半部、もう追い詰まってしまった、ならばこれをやり遂げるしかないという後半部でなりたっており、『激動の昭和史 沖縄決戦』と相似を指摘する人も多く(あれは戦局が厳しくなっていき最後玉砕に至るまでの描写を活写した岡本喜八監督の戦争大作であった)自分としては会議シーンの多くから、『日本のいちばん長い日』を想起した。(その後Twitterの感想を巡回するとめちゃくそ『日本のいちばん長い日』っぽいと指摘してる方が多く、沖縄決戦は庵野さんの喜八監督マスト発言から来ていることが判明した。)非常に『日本のいちばん長い日』っぽい、この戦局をどうするのか、決まらない会議シーンの連続。それぞれがそれぞれの思惑や考えで動いて最後の玉音放送に向かっていくダイナミックな流れを思い出さずにおられなかった。
そういう岡本喜八監督の作品からのインスパイアとリスペクトは劇中に喜八監督の肖像を登場させ、あまつさえ、その人物が非常に(劇中には登場しないにも関わらず)重要な役回りを持たされていることからも明らかだ。
ちょっと蛇足になるがその喜八監督の肖像が割り振られた重要人物は物語の冒頭に実はもうこの世にはいないことが暗示され、中盤でもそう確認される。この事は、押井守監督の『機動警察パトレイバーTHE MOVIE』でのレイバー暴走事件を引き起こした犯人、帆場暎一を思い出させる。事態の非常に重要なキーを持ちながら既にいない極めて特異なキーマンである。そして彼の残した断片により登場人物がそのピースを埋めていく作業を強いられるのはこの『シン・ゴジラ』でも繰り返されている。そしてパトレイバーの出渕氏がこの作品に関わっている(氏はヤマト2199の総監督を務める時に、庵野総監督がヤマトをする時にお手伝いをするのがいいと思っていたという発言をしている)上に『シン・ゴジラ』公開時に押井さんがTNGパトレイバーの時に主要スタッフ抜きでやった意趣返しの如く出渕さんをはじめとして脚本伊藤さんなどによるパトレイバーの新作アニメを日本アニメーター見本市の作品群の一つとして製作、劇場でかけると発表した。そんなもろもろを見ても、なんだかんだでさすが「世界の半分を怒らせる」男の影響力はマイナスの部分からでもこうやって産み出したりさせるんやなと感る。いやそれは本当に蛇足であるけど押井監督を意識してるかなあって思うシーンがそのファーストシーンや独立愚連隊めいたグループが仕切るというのに既視感を覚えた。前に押井さんが宮崎駿監督最後の作品『風立ちぬ』に際して発言したことをひきとって庵野さんがいかがであるかというコメントを出したことを思い出す流れまで織り込み済な気がする。と言っても、都市の緊急事態のシミュレーションは押井監督が先に手を出したところではあるのでどうしたって似て来るのは当然と言えば当然なんだけれど。それも含めての喜八監督なのかもしれない。(そういう演出の先達としての)
そしてその人物の名前が牧悟郎というのも特撮に造詣が深く愛情のある庵野さんらしいネーミング。牧と聞いて『怪奇大作戦』と名前がすぐに出てくる人は多いはず。ネタとしては他にも、巨大不明生物特設災害対策本部を「巨災対」と略するのは山本弘さんの怪獣小説『MM9』の気特対ようなネーミング。もちろんその元ネタは『ウルトラマン』の科学特捜隊、科特隊へのオマージュ。そしてゴジラを倒すのに熱核攻撃もやむなしという米国に対し日本側の対策は1954ゴジラでも出てきた話だがオキシジェンデストロイヤーのようなデウス・エクス・マキナなガジェットを極力排してなんとか自然災害としてのゴジラを退けようとした1984ゴジラへのリスペクトも感じたというのはこちらの深読みしすぎだろうか。あちらは最後は大島の火口へ誘ったが、その前にカドミウム弾というガジェットがあった。また『ゴジラVSビオランテ』でも同様にゴジラを不活性化させるG細胞からの薬剤を経口投与という話があった。
実のところ美点ばかりではなく欠点もあった。その一つは犠牲者の姿が直接描かれる事が少なかったということ。ただそこは想像してくれという事であろうと思う。実際にこの作品の視点は第三者視点だが国や都の対策機関の描写、自衛隊の作戦描写にさかれていたので、そこまで多くのリソースを割り振れなかったのか、それとも最初からそこは最低限のつもりだったのか。自分としては後者で、それも樋口監督が入れたのかなと思っている。いや本当に会議シーン、表面的には熱くはないのだが、内包している熱量は凄いし、ヤシオリ作戦の準備とかフェイズ1、2もそれなりに上がる要素はあるんだけど、もう一つ、ゴジラの上陸に関してヤマつくっても良かったんじゃないかなあって感じた。そして音楽が…なんかもう鷺巣さんので推してエンディングテーマかOPで伊福部テーマで良かったんじゃないかなあ。宇宙大戦争のマーチは好きだからシーンに合ってなかったけど気持ちは高揚したけど。まあ細かいつっこみは他にもあるがそれが気にならないほど会議の熱量が高かったことを付け加えておく。
キャストは日本映画最高の328人と謳われ実は最後にゴジラのモーションアクターとして狂言師の野村萬斎が当たったと発表。ゴジラに縁の有る役者としては統幕議長役の國村さんはゴジラFWで轟天号副長役で出演。官房長官役の柄本さんはvsスペースゴジラでMOGERA搭乗員で出演されている。余貴美子さんが防衛大臣役で出演されてるがどうしてもソトゴトこと『外事警察』の官房長官イメージすぎた。平泉成さんはウルトラマンガイアの千葉参謀が記憶に残っているがゴジラvsデストロイアにご出演されている。なんとも味のある演技をみせてくれたし、文科大臣の手塚とおるさんは平成ガメラ3の妙なゲームプログラマ倉田役が印象にのこっているし、環境庁の役人役で出演の市川実日子ちゃんは庵野さんのキューティーハニーで秋夏子警部を好演してた。他にも気になるキャストさんは多数だけども、映画監督としても高名な塚本晋也監督の間准教授がめっさはまり役で、もう塚本さんしかないよこの役を演じてて、そこはちょっと神がかってたと自分では思うんですが。あ、そうそうMM9実写版からか高橋一生くんと松尾愉くんも出演。他にもキャストロールで目を引いた方々も少しのシーンで皆さん印象をしっかり残して行ってるのも『日本のいちばん長い日』っぽい。えっ主人公たち?ああスズセンだったな。すくなくともMOZUのチャオでは無かったよ(分かる人には分かる)。さとみちゃんはいろいろ気が重かっただろうけど結果良かったと思う、最初はうぁっって思ったけど、大丈夫可笑しい外国語を駆使する日本人は邦画の伝統だ(ヲイ)それにちゃんと見せ場もあるし。竹野内豊は誰かが真面目なBOSSの野立って言ってたけどそうだと思う(ヲイヲイ。)でもらしい感じだし、この映画ではいいアクセントになってた。でもさ、高良くん、ツダカン、実日子ちゃん、塚本さん他の巨災対メンバーたちも主人公たちなんだよね。まさに群像劇。その意味
でもエヴァリスペクトな踊るへ本家がクオリティの高さを見せつけましたでになってた(笑
今回のゴジラ、造形が先に発表されたときバランスがおかしいなという話があったが、実はその形こそがという部分が一番の部分で詳細は省くがニコニコ超会議でモデルが公開されたときに尻尾を見て、アレって思ったことがラストにまた大写しされ、これが、ああなるほどと。いや理解したとかオチがついたとかではなく、そうか、そう来たかと。こればっかりは詳しくは書けないけれど庵野さんらしい問いかけだなと思った。
なんてことを公開3日後につらつらまとめていると、既にTwitter界隈ではぼちぼち言われてるし、さらには詳細な感想、分析、またはココがどうかという話まで…。さすがホノオモユルが終生のライバルと定めた男。そしてその後、エヴァンゲリオンを作った男が総監督な事はある(笑
そんな庵野総監督と樋口監督以下スタッフ、キャストの総力を結集した『シン・ゴジラ』今、日本で作れる怪獣映画の一つの出来る限りの回答として受け止めた。最高の怪獣映画だった。