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ベガマンはもぐらを見つけた。「裏切りのサーカス」

「裏切りのサーカス」の感想を書いた気になっていたが、実はツイッターでつぶやいていただけだったので挙げておこうと思う。

今年はスパイ映画が面白い年かもしれない。邦画の「外事警察」、洋画の「アルゴ」。
まだ未見だけど老舗の007最新作「スカイフォール」

もともとスパイ物は作品としていろんなテーマを落とし込みやすい。

ル・カレ御大のこの作品も古びないテーマが内包されてる。
まあ今のエスピオナージュはボーントリロジーとかに代表されるようなアクションも必須みたいなところもあるけど、ここまで冷徹に描ききることが出来るってのはまだまだやれば出来るじゃないとも思う。

もちろん時代設定込みの話になるけれど。そう東西冷戦下のKGBとMI6、CIAが人知れず活動していた頃だ。いや、今ももちろんそうだけど、すくなくともヒューミント(対人情報収集)が頼りの時代ではなく、シギント(通信などを中心とした情報収集)が中心の時代とは違う、人間くささがそこにはある。

特筆しとくべきはタイトルバック。なんというかタイトルは映画の顔。あのタイトルの出方はちょっとぞくっと来たよ。それでもこの作品を観た後だと、このクルーで、「スクールボーイ閣下」や「スマイリーと仲間たち」を映像化して欲しいとも思った。いろいろ説明不足というか性急さもあったけどかなりのレベルのエスピオナージュ。イギリス映画はほんとこういうのが上手い。暗い、しかも救いが無い(事も無いけども)重い話は独壇場。でもジョンブルは武士なみに誇り高き人種なのよね。

ただあの原作をよくぞここまで映像化!という部分と、え?そこはそうするのか?とかという部分があったことも事実。だがキャスト陣の醸す雰囲気や映像は非常にすばらしい出来であった。また追加改変されたシーンも映画的なエモーショナルをおいらは感じた。

とはいえこの作品の原作小説も冷戦下のスパイを活写しているということと、キム・フィルビー事件(実際にあった戦後最大の2重スパイ事件、イギリスの情報部幹部がソビエトのスパイだった)を下敷きにした小説は幾つかあるけど、その中でもスパイ小説の大家、ジョン・ル・カレの解釈をベースとし、さらには自身の創造したキャラクター、スマイリーを語り部にした3部作の端緒としても興味があるなら是非、読んで欲しい1作である。(原題名「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」)変わったタイトルだがそれが劇中で分かるので。ブログタイトルにしたベガマンも同様。

それと、まあ原作しってる人なら知ってるだろうけど、スマイリーの容姿はオールドマンとは違う。だけどスクリーンに登場したとき確かに彼はスマイリーだった。にしてもアレリンは原作で想像してたちよりかなりディフォルメされてるっぽいwそしてギラムは若造っぽいw
ゲイリー・オールドマンの演技は「レオン」や「フィフィス・エレメント」などのテンション高めではなく「ダークナイト」のゴードン警部をより抑制した感じで原作の姿形はともかく雰囲気とか振る舞いはああ、こんな感じだと。最初、ゲイリーのスマイリーで奥さん、ああなるかなあと思ったが、ああそうなるわと思わせてくれる演技はさすがでござった(笑)
出色は情報部の前任部長、コントロールを演じた、ジョン・ハート。彼も想像とは違うんだけど、やっぱりコントロールなんだよね。そこはただただ名優の演技に驚嘆です。

あと古いイギリス車好きにはたまらん画がバンバン出るので英車好きもいくと吉かもしれない。(これはマジ。ギラムのクルマが古いローバーとかたまりませんわ)

先にも書いたけど続編の映像化、実は動き出しているようなんでそこらへんも期待しつつオススメの1本

by tonbori-dr | 2012-12-25 22:08 | Movie